Column 7 西荻窪のイベント・芸術
遊空間がざびぃ【ワークショップ編 二回目(前編)】
Project*Rocca 劇場連続ワークショップ 【アトリエ 2010】
遊空間がざびぃで行われた演劇ワークショップ体験の二回目。
ワークショップ自体は4月7日から11日までの5日間連続で行われたのだが、私の都合で二日目の8日は参加出来なかったため、三日目の9日が私にとって二回目の参加である。
今回の参加者は11名。男女比は3:8!圧倒的に女性が多い。参加者は、ワークショップ開催期間中一日だけ参加する人、私のように何日か参加する人、そして5日間全てに参加する人の三種類に分かれる。
時間帯は平日である7日から9日までは、会社勤めでも参加しやすい19時からの2時間半。しかし土日である10日と11日は、最終日の18時に発表予定の公演に向けて稽古と準備になるので、14時から20時までの6時間。公演参加予定者はワークショップを一日以上体験し、土日は両日参加が条件となっていた。
舞台に立つ、ということは、「恋愛」に似ている。
ありのままの自分でいたいと思いながら、相手の視線を意識してしまう。
(Project*Roccaワークショップチラシより)
さて、二回目である9日も開催時間より早めにがざびぃに到着したので、私は着替えてストレッチを始めた。すると、一日目に見知った顔がちらほらいたので、軽く会釈で挨拶をする。通しで参加の人たちは、同じメンバーで三日目となる今日の雰囲気は柔らかい。しかし、三日目から初参加の人もいた。その中の一人はがざびぃスタッフの『ヨシノ』さん。私同様、まるで演劇経験のない初心者とのこと。仲間発見!やはり緊張していたので演劇ワークショップ経験の先輩として「ふふふ…。かなり体を動かしますよ!筋肉痛に注意!」とアドバイス(脅し?)しておく。
開催時間になり、なぜかなおさんが興奮気味に集まった参加者に呼びかける。
「昨日はね、インプロ中にミラクルが起きたの!『ハセガワ』さんが凄かったんだよ!でも、昨日の参加者は是非昨日のことは忘れてください!ミラクルは滅多に起こるものじゃないし、今日は今日!だから、今日のワークショップに集中してくださいね!」
昨日の参加者から笑いが起こる。昨日一体何が起きたんだろう??話題にでた男性、『ハセガワ』さんを目で追う。彼がミラクルを起こした?なんのこっちゃい?そして『インプロ』ってなんだろう??『?』はつきないが、私も今日は今日と割り切ることにする。
このワーク ショップの目的は、
短期間で芝居を作る即席の技術を身につけることではない。
緊張してもいい、口ごもってもいい。(ワークショップチラシより)
まず、なおさんは一回目にも宣言した三つの約束を再度説明して今日の自己紹介に入る。順番に名前と好きな動物を言い、同意見の人が名乗りをあげる、というルールをなおさんが提案するが、実際やってみると「犬」「猫」「くらげ」「…犬?」などメンバーの思いつく動物がかぶってしまったりして、どうも上手くいかない。そこでなおさんが冷静に「あ、これいまいち面白くないね。やめよう!じゃあ、どうしよっかなあ…」とストップをかける。その場の空気や人や状況を見て、なおさん自身も試行錯誤しながらこのワークショップは作られていくようであった。
そこで気分を改め、お馴染みのゲームのような作業が始まった。前回のように、沢山のメンバーの中から偶然に組むことになった2人で行われる。今回の私のお相手は主催者の一人である女性、『ユキオ』さん。なおさんからの指示が飛ぶ。
「今すぐ2人の共通点を3つ出して、決まった組からすぐに座って。10秒でね!はい、スタート!」ユキオさんと私は同時にお互いの頭を指差し、息もぴったりに「黒髪!!」。つづいて「女性!」「日本人!」。3秒で着席(笑)
「日本人」というのはちょっと卑怯だったかな?と思いきや外見で共通点を見つけたグループは多かった。別の組では更に上へ行く「人間」があったり、男性同士の組は「二人ともカッコイイことです!」というあまりにも主観的な共通点を堂々と!その組の性格が出ていて面白い。
ようやくなんとか全員の組が座ったと思ったら、そこになおさんが畳み掛ける。
「じゃあ次はその2人の共通の趣味を3つ出して!ただし言葉は使っちゃだめだよ。ジェスチャーで表現してね!はい、スタート!」
始まりと同時にユキオさんがカメラのシャッターを押す仕草をしたので、すぐに『写真』が趣味だとわかった。ぶんぶん頷き同意を示し、今度は私がラーメンをすする仕草で『食事』を表現。これもどうやら伝わったが3つ目は、なかなか見つからず時間が経つ。焦りながら2人でしばし色んなジェスチャーをし合い、ようやく私が本をめくる仕草『読書』をしてユキオさんが頷いた。さっきより難しい…。なにせ、ジェスチャーが正確に相手に伝わっているのかも不確かなのだから。言葉なしで伝えると言うのは、大変だなぁ…。
特に唯一男女で組んだ組は他の組より長くかかっていた。ジェスチャーは分かってもなかなか趣味が合わないようなのだ。他の組が全員座って見つめるなか、二人は片っ端から思いついたジェスチャーを半ば必死でやりあっていた。しかし、当人たちが必死であればあるほど、傍からみればコミカルでほほえましく見えるから不思議なもんだ。
二人がへとへとになって座れた後、全員でジェスチャーが本当に伝わっていたか答え合わせを行い、感想を言い合った。
「ダメだな、自分」と思っている面が、実は観客にはチャーミングに見えていたりする。
「それも自分」と認めるところからはじめてみよう。(ワークショップチラシより)
その後は、なおさんがラジカセを操作し、ノリの良い音楽を流しだした。そして、その場で今度は3人組になるよう指示が飛ぶ。先頭の人が音楽のリズムに合わせて適当に振り付けをする。それを後ろの人が真似をして、最後の人も続く。音楽のキリが良いところで次の人にバトンタッチして、先頭の人は列の一番後ろにつく。
3人組みの各グループでこれをしばらく行ったあと、指示により徐々に全員が一列になって、最終的には皆で一つの輪になって真似しあった。
これも体をかなり動かすので、動悸どころか息切れも…。それにしても、私はリズムに合わせて振り付けをするのがつくづく苦手だと実感…。体を動かすこと自体は面白いんだけれど、どうにもリズム感がない…。上手な人は本当によくもまあ即興で!と関心することしきり。本当にこの「即興」で驚くことになるのは、もう少し後なのだけれど…。
さて、散々皆で動き回った後は、一回目と全く同じ内容の、各自一人になるための作業が行われた。自分ひとりきりで自分の身体(腰・足・背中)ととことん遊ぶことによって、動から静へと切り替わった。
自分の意識も外から内へ。自分という存在・他人という存在、そんなことを意識せずに考えていたような気がした。静寂が空間を満たして、私は小さく小さく丸まった。
そして、またゆっくりゆっくり立ち上がり、歩き出し、皆と再会していく。再び、今度は内から外へ。たった二時間半の中でこの作業が何度も自分の中で起こるのは、なんとも言えない不思議な気分。そのうち外なのか内なのか、わからなくなりそうだった。
そして、これも一回目と同じく『レシーバーとムーバー』をやった。 今回はなおさんからメンバーの調整があり、私の相手となったのは昨日よりこのワークショップに参加されたという『ケイコ』さんという女性。お互いこの作業は二回目、というわけであっさりスタート。
一回目は初対面の異性であるもっちーさん相手に緊張して同様しまくってしまった私だが、同じく初対面のはずのケイコさんとはなぜか、びっくりするぐらいうまくいった。同性だからなのか、二回目だからなのか。相性が良いのか。これもなんとも不思議。
しかも、この作業を行っているうちに、ケイコさんがなぜか『自分自身』のように思えてきたのだ。ちなみに私とケイコさんは身長差もあるし似ていない。それでも、なぜか相手が自分のように思えてならない。つまり、自分自身で見詰め合っているような不思議な感覚。。
終わったあとも、あれ?私は誰だっけ?といったクラクラした状態を引きずってしまった。この作業は通称『ミラーゲーム』と呼ばれているらしい。なるほど、納得。
そんな私をよそに、この作業を行うのが全くの初めてであるヨシノさんは、一回目の私と同様「私、人の目を見続けることが出来ないと思うんですけれど…」となおさんに相談していた。「無理しなくていいよ。でも、やれるだけ試しにやってみようか!」という返答に、ヨシノさんも躊躇いつつミラーゲームに挑戦していた。
そのうえ今回は更に発展して、最後はなんと全員で輪になってこのミラーゲームをやることに。一対一の時は相手の目をみていたけれど、輪となっている今度は全体の動きをぼんやりと視界でなんとなく捉える。誰がムーバーなのかさっぱりわからない。
最初はゆらゆらとゆっくり始まった。しかし、あれあれ?気がついたらどんどん動きは激しくなっている!全員でぐるぐる回っていたり、どんどん前にでたり、しまいには皆でがんがん床を叩いていた!一人としてついていけない人はおらず、全員全力でみんなの真似をしている。…冷静に考えればちょっと怖い光景なんだけれど、その時は夢中で真似するのに必死!もう「マネしよう」なんていう意識すらなかった。
なおさんから「はい、終わり!」という合図が起こった頃には、みんな限界を超え、水を取りに行く人や床にへたりこむ人続出。
なおさんはヨシノさんに「ほら、ヨシノさんもこの作業、無理せず出来ていたじゃん♪」と話しかけ、ヨシノさんも「あ、ホントですね!いつの間にか、全然意識していませんでした!」と驚いていた。私も同感。
そして、ここで休憩をはさむことになった。
< 遊空間がざびぃ【ワークショップ編 二回目(後編)と 最終公演】 へ続く >
はなのあるひと。Project*Rocca
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