Column 7 西荻窪のイベント・芸術
アトリエ・カノン10周年ライブ
2011年12月23日、日本と韓国のアーティストが集い、アトリエ・カノンにて10周年ライブ・イベントが行なわれた。
会場に着いたときには開演前にもかかわらず、既に多くの人が集っていて、カノンで行なわれるイベントの人気の高さがうかがえた。
出演するバンドの一組、Ashgrayのリーダー、ノ・ミニョクは「カノンで演奏できることは光栄なことだと思っていますし、西荻窪を、そしてフクシマを、少しでも活気づけたいという想いが強いんです」と、誠意を持って語ってくれた。
印象に残ったアクロバティックな楽曲とハスキーな歌声
ライブは地下のイベント・スペースで行なわれた。身動きが取れないほど満員で、オーディエンスは100人近くいたであろう。
1番手は作曲家兼音楽プロデューサーのTakamasa。打ち込みと歌謡曲を思わせるメロディを丁寧に紡いで楽曲を歌いこなしていた。まさに、こなれている、という感じ。とても流暢な歌声だ。
2番手に登場したのはSAYURI。もともと演歌歌手だった彼女の歌声はコブシが効いていて力強く、迫力があった。
さらには演歌からポップスへ、ポップスから演歌へ、という楽曲の展開を見せ、それは演歌とポップスのクロスオーバーというよりは、アクロバティックに結合させていた。
その様は圧巻で、思わず前のめりになってしまった。演歌とポップスの新たなカタチを提示したと言える。シンセとギターを交え、韓国語の曲を披露するところにも、SAYURI自身にとって音楽性を広げていこうとする姿勢が見えた。
続いて登場したKeikoはサラ・ヴォーンを思わせるハスキーな歌声を存分に披露し、オーディエンスを盛り上げる。次々と個性のあるアーティストが登場し、観客を飽きさせない。
韓国の実力派アーティストAshgray
そうこうするうちに登場したAshgray。韓国で人気の実力派アーティストと謳われるバンドだ。
「小田和正が大好きで、歌詞を大切に歌いたい」と語るヴォーカルのマ・ヒョングォンの歌唱力は高く、歌声が会場全体に広く行き渡り、オーディエンスを虜にした。
Ashgrayの楽曲はUKロックの匂いがある。それは「オアシス(90年代と00年代を代表するイギリスのロックバンド)の音楽が僕の青春だった」というバンド・リーダー、ノ・ミニョクの音楽的嗜好が反映されているからだろう。小田和正とオアシスの音楽性が混じり合った曲の数々は会場に新鮮な空気を吹き込んだ。
Ashgrayのメンバーいわく「日本の音楽文化はとても高い。だからこそ日本で活動したい」とのこと。そして「日本で活動するために独学で日本語を学んだ」のだという。
実際、小田和正の『言葉にできない』をカヴァーするなど、日本語の曲を歌う姿があった。それらはバンド形式でフォークロック的に演奏されていた。
それはそれで良いと思うのだが、「本当はエレクトリック・ギターでヘヴィなロックを鳴らしたい」というメンバーの発言が頭に残った。
曲の合間に12月24日が誕生日のノ・ミニョクにケーキが運ばれてきたり、ちょっとしたジョークをAshgrayのメンバーが交わし合ったりと、パーティー的に盛り上がる場面もあり、イベントとして大成功に終わった一夜だった。
アトリエカノン
http://gut.co.jp/kanon/
住所:東京都杉並区西荻北4-15-13
電話:03-5938-1870