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第三回 『サウンドトラック』
「君、西荻在住なの?西荻って宝くじが凄い流行っているんだってね!西荻住人はみんな占いがめちゃめちゃ好きらしいから。」
「えー!?そんな噂、初めて聴いたよ!西荻に住んで3年目だけれど、別にそんな印象ないしなあ…。大体私自身占い好きじゃないし。。一体、誰に聴いた情報なの?」
そんな会話を、ちょっと前に仙台在住の友人とした。よくよく話を聴いてみると、どうやら西荻が出てくる本を読んでの情報らしい。自分の知らない西荻のイメージを仙台の友人が持っているのが面白くて、その本を読んでみることにした。
本書はフィクションであり、実在の企業・組織などとは
無関係であることをお断りします。
それが古川日出男著「サウンドトラック」(集英社文庫で上下巻)だ。本を開いて早々にまず黒字に白抜きでドーン!とフィクション宣言がしてある。 2003年9月に刊行されたこの本では、未来にあたる2009年の東京が舞台だ。
ここで描かれる東京はヒートアイランド現象によって熱帯と化し、外国人排斥運動も激化している設定である。勿論、2010年の今から見て過去である現実の2009年東京とは異なっている。
激変した東京で、ふたりが出会ったものとは――。
疾走する言葉で紡がれる、新世代の青春小説。(上巻裏表紙より)
簡単にこの本の内容を説明しよう。
幼い頃海難事故に遭い、漂着した無人島で生き抜いた経歴を持つトウタとヒツジコという2人の男女が主人公。この2人が成長した後離れ離れになるが、それぞれ東京の別の場所で暮らすようになり、この異様な東京をそれぞれの理由で崩壊に導いていくことになる。
西荻窪というエリアもわずか一年で激変して純日本人の保護区(サンクチュアリ)と化す。(上巻p160より)
西荻窪に関する描写は上巻160ページ(第十章)から始まる。
主人公の一人であるヒツジコの暮らす西荻窪は、私が良く知っているニシオギ描写も交えつつ、当然のごとくフィクションいっぱいに描かれている。
西荻窪駅北口には「ここは日本です!日本語を使いましょう!」と書かれた幟が立ち並んでいたり。西荻住人は宝くじや占いに群がり、銀行の宝籤売り場に300mもの行列が続いたり。町内会では「ニシオギ婦人」により純日本人を増やすため子作り推進運動が起こったり。「ニシオギ万歳!」と叫ぶ群衆により、タイ料理店もトルコ料理店も襲撃されてしまったり。「安全な西荻地域社会をめざして」という基金により、違法に武装した自警団が西荻地域をパトロールしていたり。西荻では聖動物として猫があがめられ、その首輪の色で吉凶が占われていたり。…あれ、これはちょっと本当かも(笑) とにかく現実の西荻窪との違いを挙げていったら枚挙はいとまがない。
そしてヒツジコは全ニシオギ人を迎え撃つ。(下巻165pより)
このフィクションの西荻窪とニシオギ住民が、この物語でどういう結末を迎えるか知りたい方は、是非ご自分でその続きを読んで頂きたい。西荻住人との話のネタになること間違いなしだ。ただし、フィクションと言うのを忘れずに!
サウンドトラック (上) (集英社文庫) (文庫)
出版社: 集英社サウンドトラック (下) (集英社文庫) (文庫)
出版社: 集英社