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第六回 『詩歌の待ち伏せ 2』
2011年5月21日(土)にJR西荻窪駅南口「一欅庵」にて行われた「声薫る夕べ vol.5」というイベントに参加してきました。14時の会「Aプログラム」だったので、北村薫作『詩歌の待ち伏せ 2』の朗読と津軽三味線のライブを堪能することが出来ました。
主催者の北原さんは、この本について「《本の達人》北村薫さんが人生の折々での詩歌との出会いを描いたエッセイ評論です。すこやかな好奇心と鋭敏な安静に心地よく耕される北村文学館は、いつでも窓をひらいて、私たちを更なる世界へ導いてくれます。」と紹介されています。
このイベントでは、エッセイ二十篇が納められた中から三篇が朗読されました。
十一、「生くるてだて」「茶の中に」坪野哲久、「さながらに」谷中安規 (109p)
この日は本の作者である北村薫さんご本人も観客としてご参加の上、上記エッセイにて紹介されている坪野荒雄さんもいらっしゃる中、お二方による簡単な挨拶がありました。
十三、「北尾改め」「押してください」(128p)
北原さんの心がこもった艶のある朗読、時折入る三味線の音色、聴くものの想像力をサポートする画像、そして一欅庵の庭からそよぐ5月の風。全てが一体となった素晴らしい空間が出来上がりました。
二十、「衆視のなか」中城ふみ子、「書簡」中井英夫・中城ふみ子 (191p)
この本でも最後にあたる上記エッセイには、西荻窪との不思議な縁がありました。最後のページに西荻窪の地名が出てくるのです。
「東京都杉並区西高井戸二―十九 青雲荘 中井 英夫」
エッセイによると、昭和二十九年八月二日当時の住所であり、現在の西荻窪の住所では「松庵」という地名になっています。
一欅庵の当主辻さんにお話を伺ったところ、なんと当時の地図があるとのこと。ご厚意で拝見させて頂くことが出来ました。確かに「青雲荘」が地図上で確認できます。
エッセイは小説ではなく、この話で出てくるエピソードは「フィクション」ではない。それでも本を読み終えると、朗読を聴き終えると、実際の当時の地図を見ると、実際の西荻窪を歩くと、全ては繋がっていき、体験した一人ひとりだけの「物語」となっていくのがわかります。じわじわとした静かな感動が私の胸に広がりました。
言葉の力、詩歌の心、そして自分自身の《物語》に浸れる一冊です。
詩歌の待ち伏せ 2
文藝春秋 550円■関連する場所
登録有形文化財「一欅庵」
住所:杉並区松庵2-8-22■関連リンク
2011/05/18 北村薫作品朗読イベント『声薫る夕べ』Vol.5
http://www.nishiogi-navi.com/news/news/20110518.html