Column 2 西荻の詩
2010/01/12
西荻富士
中央線から、富士山が見える。
晴れた日、7時か、8時くらいの方角に。
このあたりから富士山が見えるということは
住んでみるまで思いもよらなかったが
あるとき知って、うれしかった。
おどろいた。
私は山梨県の甲府という街で生まれた。
幼い頃から4時の方角に富士を見て育った。
毎日見ていたので何かを感じることは
あまりなかった。
今、私は中央線から、西荻窪から、
ときどき富士山を見ることができる。
それはふるさとの富士山より小さく、
そして、遠い。
しかし、私はふるさとに居たあの頃よりも、
ずっと目を凝らし、まっすぐに、親しみを持って
富士を眺める。
父、母や、友人たちは今も毎日、4時の方角にある
あの富士の山肌を見ている。